形成外科と皮膚科
2つの専門性を活かして

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医師を目指したきっかけは?
interview 01
家族の中にひどいアトピーで悩んでいる者がいて、その姿を間近で見てきたことから、医療、特に皮膚科の道に進みたいと思うようになりました。そのため近畿大学の医学部に進学した当初から、皮膚科医になることを意識していたのです。ところが、大学での勉強を進めるうちに、形成外科に強く惹かれるようになりました。皮膚再生や形成外科的な治療について学ぶ中で、「これは面白い」と興味を持ったのです。そしてちょうどそのタイミングで、家族が形成外科で治療を受けることになり、「形成外科へ進みたい」という気持ちが強くなっていきました。最後まで皮膚科か形成外科か悩みましたが、最終的に形成外科を選びました。ただ、その後も皮膚科への思いは消えず、2018年に近畿大学医学部の皮膚科の教授から「手術を担当する医師がいないから、やってみませんか?」とお声がけいただき、皮膚科も兼務することになりました。今にして思えば、両方の分野に携われる幸運に恵まれたと感じています。

02
形成外科の魅力は?
interview 02
形成外科の魅力は、患者様のQOL(生活の質)を向上させられる点です。命に直接関わらない部分かもしれませんが、見た目や機能を改善することで、患者様の日常生活を大きく変えることができます。また、形成外科は比較的新しい分野です。整形外科や消化器外科などは術式がある程度確立されていて、先人たちの知識や技術をベースに発展している一方、形成外科はまだ体系化されて間もない部分があります。この「未完成」な部分、発展途上であることの面白さに惹かれました。

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スキンサージャリーセンターでの経験は?
interview 03
近畿大学病院のスキンサージャリーセンターでは、副センター長を務めていました。このセンターは、皮膚科と形成外科の「いいとこどり」をするコンセプトで作られました。例えば皮膚がんの診療では、通常、皮膚科で診断して、外科的治療が必要なら形成外科へバトンタッチする分業制が一般的です。しかし、これをよりシームレスに繋げようと、皮膚科の診断技術と形成外科の手術技術を集約したのがスキンサージャリーセンターです。皮膚がんは特に顔に発生することが多く、「ほくろだと思っていたら皮膚がんだった」というケースも珍しくありません。そういった場合、単に切除するだけではなく、できるだけ綺麗に仕上げることが大切です。センターではそういった皮膚腫瘍の症例を多数経験して、大阪では最多の件数(DPC件数において)を扱いました。
確かな技術と経験で行う
陥没乳頭、できもの・しこりなどの手術

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クリニックで対応している日帰り手術は?
interview 04
当院では幅広い日帰り手術に対応しています。具体的には、陥没乳頭の手術、できもの・しこりの切除、腋臭症(わきが)の手術、巻き爪の治療などです。形成外科専門医として長年培ってきた技術と経験を活かして、患者様お一人おひとりに合った治療をご提案しています。また眼瞼下垂(まぶたの垂れ下がり)の手術も行っています。当院では患者様の負担を最小限に抑えながら、見た目と機能の両面で改善を目指した手術を心がけています。

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陥没乳頭の手術について詳しく教えてください
interview 05
陥没乳頭は女性の約10人に1人が経験すると言われている、比較的多い状態です。診断は視触診で行い、Ⅰ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)に分類します。軽症であれば吸引器やマッサージで改善する可能性もありますが、Ⅱ度以降は手術が必要になることが多いです。手術には大きく2つの方法があります。糸で乳頭を挙上・固定する埋没法と、切開して乳頭を引き出す切開法です。どちらも当院で対応可能ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。埋没法は傷跡が少ない反面、再発のリスクがやや高く、切開法は、再発リスクは低いものの傷跡が残ります。患者様のご希望や状態に合わせて最適な方法をご提案します。

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腋臭症(わきが)や粉瘤の手術の内容は?
interview 06
腋臭症(わきが)の手術は「皮弁法(反転剪除法)」という術式で行っています。これはアポクリン腺(特殊な汗腺)を除去する手術です。効果としては、においが10分の1程度、汗の量が3分の1程度になると言われています。完全ににおいがなくなるわけではありませんが、日常生活で気になるレベルからの大幅な改善は期待できます。粉瘤(アテローム)については、症状によって治療方法が異なります。通常の粉瘤は「くり抜き法」という小さな穴から中身を取り出す方法で対応可能ですが、炎症を起こしている場合(炎症性粉瘤)は切開して中身を出し、袋ごと取り除く必要があります。このように袋ごと取り除くことで、再発のリスクを大幅に減らして、痛みや腫れを根本から解消することが可能になります。

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その他の手術はいかがですか?
interview 07
脂肪腫は基本的に切開して取り除きますが、悪性の可能性(脂肪肉腫)がある場合には大学病院などの専門機関をご紹介します。いぼやほくろも、状態に応じてメスでの切除やCO2(炭酸ガス)レーザーでの治療を選択しています。見た目だけではなく、悪性腫瘍の可能性も考慮した慎重な判断を心がけています。特に「急にできたほくろ」は早めに相談されることをおすすめします。巻き爪については、保険診療でフェノール法を中心に治療を行っています。これは爪の生え際に薬剤を塗布して、痛みの原因となる部分の再生を防ぐ方法です。長年悩まれている方も多いのですが、適切な処置で短期間に改善させることが可能です。
患者様の心に寄り添う診療環境と
丁寧なコミュニケーション

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クリニックづくりのこだわりは?
interview 08
当院は赤ちゃんからご高齢の方まで、どなたでも気軽に来ていただけるように明るい雰囲気づくりを心がけています。特にこだわったのは患者様のプライバシーへの配慮です。手術後の傷跡や、お顔への処置など外科的治療を受けた患者様には、特に配慮が必要です。そのため待合室のレイアウトを工夫して、対面式ではなく、カウンター形式の座席を設けて、患者様同士の視線が合わないように配慮しています。また予約優先制を採用して、待合室が混み合わないように調整しています。これも患者様同士がすれ違ったり、顔を合わせたりすることをなるべく避けるための工夫の1つです。

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患者様と接する時に大切にしていることは?
interview 09
患者様のお話をしっかり聞くことを何よりも大切にしています。特に手術が必要な場合は、患者様の不安や期待を丁寧に汲み取ることが重要です。形成外科の手術では、患者様によって求める治療ゴールが大きく異なります。仕上がりにこだわる方もいらっしゃれば、「ある程度良くなれば満足」という方もおられて、それぞれの目標によって最適な手術方法が変わってきます。例えば陥没乳頭の手術では、傷跡をできるだけ残したくない方には糸で挙上・固定する方法を、再発のリスクを最小限にしたい方には切開法をご提案するなど、患者様に合わせてカスタマイズしています。患者様のご希望をじっくりおうかがいして、それぞれの手術方法のメリット・デメリットをわかりやすくご説明しています。

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やりがいを感じる瞬間は?
interview 10
傷が綺麗に治った時や、手術した部分が上手く機能するようになった時に大きなやりがいを感じます。形成外科医として、「綺麗に治る」というのは本当に喜ばしいことです。印象に残っているのは、巻き爪による爪まわりの炎症(ひょう疽・化膿性爪囲炎)で、1年以上も他の医療機関で治療を続けていたけれど良くならなかった患者様が、当院での治療で、1ヶ月ほどで改善したケースです。その方は液体窒素治療を繰り返していましたが、実はそれだけでは完治しない状態でした。適切なタイミングでの外科的処置が必要だったのに、それがなされていなかったのです。当院で適切な処置を行ったところ、短期間で治り、とても喜んでいただけました。そういう時「クリニックとして存在意義があった」と強く感じます。命に関わらない病気は「まあいいか」となりがちですが、患者様のQOLを大きく左右することもあります。その改善に貢献できた時の喜びは何物にも代えがたいものです。
“あたまのてっぺんから爪先まで”
いつでも皆様のお力になります

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サイトをご覧の方へのメッセージをお願いします
interview 11
陥没乳頭に限らず、体の外表面に関するお悩みはとてもセンシティブな問題です。「こんなことで受診してもいいのかな…」「人に相談しづらい…」と思われることも多いでしょう。しかし、そういったプライベートなお悩みこそ、専門的な手術の経験を持つ医師にご相談いただきたいと思います。 皆様のプライバシーに最大限配慮した環境を整えて、女性の方が気になさるような部位の診察では、必ず女性スタッフが同席いたしますので、ご安心ください。 また、できものやほくろなど「これくらい大丈夫かな?」と思われがちなものでも、早めに専門家に診てもらうことが大切です。当院では、わずかな変化でも丁寧に診察して、適切な治療をご提案します。 「あたまのてっぺんから爪先まで あんしん安全な医療を」という理念のもと、外表面に関するお悩みの窓口として、いつでもお力になりたいと思います。どうぞ気兼ねなくご相談ください。